群青色の時間

遥かなるマスター・オブ・ライフ<人生の達人>への道

大童澄瞳「映像研には手を出すな! 第1~5巻」

【若干のネタバレあり】

NHKで放送中のアニメ「映像研には手を出すな!」の原作漫画です。

芝浜高校という謎めいた増改築が繰り返された学校を舞台に、映像研究同好会を立ち上げてアニメ制作に取り組む女子高生達を描いています。

時代設定は2050年代とのことですが、昭和や平成の時代の建築物がベースとなった猥雑な感じの街が楽しく、独特の世界観が構築されています。
昔の創作物には、30年以上も先の未来ならもっと突拍子もないテクノロジーの進化を描いたものが多かったと思います。
作者自身がリアリティのある設定を追求する方のようで、ファンタジー的な世界でありながら、「有り得なくはない範囲内」の未来というところでしょうか。

私がこの作品から受ける全体的なイメージでは、経済成長が鈍化し、昔の古い建物も老朽化が進んでいる退廃的な世界、というような描き方にも見えます。
実際にそこに住んでいる人達の多くにとっては、日常は刺激がなく退屈なものなのかもしれません。
そんな中で、主人公の浅草みどりは、自分の生きている街が冒険的でワクワク感に溢れたものであるという感覚を持っている人物です。
人とは違う視点で物事を見ている様は、まさに物語の中心であり、ヒーローと言えます。

アニメの方は、俳優の伊藤沙莉さんが主人公の浅草氏(作中での呼称)の声を担当されています。
伊藤さんの独特の声が浅草氏のイメージにぴたりとはまっているという印象です。

NHKで日曜日の深夜24時台(つまり月曜日)というちょっと辛い時間帯に放送されています。
明日2月2日(日)には、今まで放送された4話までを16:15から一挙再放送するそうですので、気になった方は是非ご覧下さい。

この作品は、登場人物にとっての現実世界と、彼女達のイマジネーションの世界が融合するシーンがユニークです。

子供の頃に読んだ「いやいやえん」という絵本を思い出しました。
幼稚園の教室で子供達が船でクジラを獲りに行くというごっこ遊びをしていたかと思うと、いつの間にか本当に海に出ているような描写に変わる話があります。
当時の私はそのナンセンスかつシュールな展開に付いて行けず、「え? 何これ? 何で? どういうこと?」とずっとモヤモヤしていたものです。
「いやいやえん」があったおかげで「映像研」をすんなり受け入れることができたんでしょうか。
違うと思うけど(笑)。

ちなみに調べてみたところ、「いやいやえん」は1962年12月に初版が出たとのことでした。
ビートルズとほぼ同期です。
「いやいやえん」は今でも新品で購入できるようですが、令和の時代に至るまで読み継がれているというのは凄いことですね。

映像研には手を出すな! (5) (ビッグコミックス)

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いやいやえん (福音館創作童話シリーズ)

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