本日、尼崎のピッコロシアターで行われた桂米團治独演会に行ってきました。
演目は下記の通りです。
桂慶治朗「子ほめ」
桂米團治「淀の鯉」
桂宗助「釜猫」
桂米團治「一文笛」
中入
桂米團治「くしゃみ講釈」
「淀の鯉」と「一文笛」は、米團治さんの師匠であり父上でもある故桂米朝師匠の作です。
特に「淀の鯉」は、米朝師匠が先代の桂米團治師匠に入門する前に米團治師匠のために書いた作品でレアな演目です。
先代米團治師匠がこれを演じることは結局なく、お蔵入りになっていた原稿から2010年代になって「復活」。
時を経て米朝師匠の息子が米團治の名前を継ぎ、幻になりかけていた作品を演じているということにロマンを感じずにはいられません。
お茶屋遊び好きの旦那と幇間のキャラクターも魅力の噺で、華やかな芸風の当代米團治師匠のカラーにも合っているので、これから定番の演目になることを期待したいと思います。
「一文笛」は私が落語を聴き始めるきっかけになったNHKの特番で米朝師匠が演じられていた噺の一つです。
思い入れのある演目ということもあって、それを米團治師匠が演じていらっしゃるというだけで感涙を禁じ得ません。
中入が終わって最後は「くしゃみ講釈」。
米團治師匠の「くしゃみ講釈」は恐らく初めて聴きました。
客席に笑いが絶えない演目で締め括り、楽しかったという余韻で皆笑顔で帰途についていたのが印象的でした。
今日の演目の中で特筆したいのは「一文笛」です。
落語はドカンドカン笑いが起こる噺ももちろん楽しいわけですが、こういうじっくり聞かせる系の噺で演者が会場の空気を掌握している感じ、客席全体が高座に集中して固唾を呑んで聴いている感じ、あの雰囲気、空気感が堪らなく好きなんですよね。
米團治師匠はその空気を作ることができる落語家で、もうカッコ良すぎて噺が終わって中入になってもしばらく席を立てませんでした。
いやー、落語とはなんと深い芸なんでしょう。
現在米團治師匠は米朝事務所の社長も兼務しておられます。
コロナ禍で落語会も通常通りの開催が難しい状況が続いておりご心労もいかばかりかとお察ししておりますが、どうかお疲れの出ませんように……。