群青色の時間

遥かなるマスター・オブ・ライフ<人生の達人>への道

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~」

【若干のネタバレあり】


ちょっと時間が経ってしまいましたが、「ビブリア古書堂」シリーズの最新刊がこの夏に出版されたので読みました。

このシリーズを読むようになったきっかけは剛力彩芽さん主演のテレビドラマでした。
特に剛力さんのファンというわけでもなかったのですが、本にまつわるミステリーというのが面白そうだと思って観始めたのです。
当時ネット上で、原作好きの人達からこのドラマのキャスティングが結構叩かれていました。
原作の主人公のイメージに合うかどうかという点に限って言えば、まあ賛否の否の声が上がるのもわからなくはありません。
ドラマ放送の時点で原作を読んだことがなかった私は、物語としては面白いと思って観ていました。

この作品はその後、全く違う出演者による実写映画も制作されています。
これは原作を読んでから鑑賞しました。
映画については、原作の面白さを出さないままストーリーが展開しているような作品でした。
原作の話に沿ってはいるものの、なかなかのスピンオフ感です。
個人的にはドラマ版の方が好みですね。
蛇足ながら、この映画の中で不倫をする人物を演じていた男性俳優が、後になってプライベートでも不倫問題で世間を騒がせるという出来事もありました。
そんなリアリティ要らんのよ……。

さて、最新作のタイトルは「ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~」。
栞子と大輔の娘である扉子(扇子と空目してしまうことがある)は高校生になっており、過去に両親が関わった事件の顛末の記録を読むという設定になっています(実際に扉子が読んでいるのは、三部構成になっているうちの1本目と3本目だと思われる)。
我々読者の現実世界である2020年を基準にすると、本書の三分の一は未来の出来事が綴られているパートです。
三部構成の三つ目のエピソードは、高校生の扉子にとっては過去の話ですが、2021年の物語です。

今作では、横溝正史の作品にまつわる事件が描かれています。
横溝は探偵小説である金田一耕助シリーズのイメージが強い作家ですが、今回の「ビブリア古書堂」はミステリーではない横溝作品「雪割草」を巡る話が全体の軸となっています。

私は、横溝正史の作品は昔何冊か読んだことがある程度で、やはりほとんど金田一耕助が主人公のものでした。
大学時代に一作だけ、ミステリーではない横溝の短編を読んだことがあります。
色々な作家の小説がまとめられた全集のような古い本に収録されていました。
大学内の図書館とは別に古い学舎の一角にあった図書室で、数十年は動いているであろう冷房装置がうなっている中で読みました。
あの時、何かの本を探していたのか、講義の合間の暇潰しをしていたのか、そこは覚えていません。
横溝正史の名前に本名の「まさし」という読みのルビが振られていたので、横溝の作家活動の中でも早い時期の作品なのかなと思った記憶があります。
情けないことに、その本や作品自体のタイトルも内容も忘れてしまいました。
昔から本や映画の内容をすぐに忘れてしまうんですよね(汗)。
こうしてブログに書いておけば備忘録にもなるので努めて記録しておきたいと思います。

この「ビブリア古書堂」シリーズは7作目まで書名のサブタイトルが「栞子さんと○○」となっていましたが、前作から「扉子と○○」に変わっています。
次回作以降も、扉子の誕生前、幼少期、高校生期、といったそれぞれの時期の使い分けで物語が描かれていくのでしょうか。
主人公が実質扉子になっていくのか、「ドラゴンボール」で魔人ブウ編から悟飯が主人公になったはずなのに気がついたら結局悟空が主人公やんというような展開に落ち着くのか、そのあたりも楽しみです。

尚、このシリーズは最初からずっとなんですが、明らかな誤字脱字の類が多く、今回もいくつか目につきました。
このレーベルの他の作品を読んだことがないので全体的にこんな風なのかはわかりませんが、少々雑な感じ印象を与えるのが若干残念です。