群青色の時間

遥かなるマスター・オブ・ライフ<人生の達人>への道

菊池涼介

昨日横浜スタジアムで行われた横浜DeNAベイスターズ広島東洋カープの試合で、カープ二塁手菊池涼介が2019年9月以来の失策を記録しました。
昨シーズン、NPB史上初めて二塁手としてシーズン守備率10割という金字塔を打ち立てた名手の2年ぶりの失策。
安打にも見える際どいプレーだったこともあり、ネットも騒然としていました。

8回裏、ベイスターズ桑原将志が放った高いバウンドのゴロに猛チャージした菊池でしたが、打球がグラブの土手に当たって捕球できずに前にボールが転がる間に打者走者は一塁へ。
記録は失策となり、足かけ3年に渡って続いていた菊池の連続守備機会無失策記録が569でついにストップしました。
いやー、あれが失策とはちょっと判定が厳しくないですかね、公式記録員さん……。
捕っていてもあの体勢から送球してアウトにするのは難しかったと思います。
菊池の守備力であればアウトにできた、かもしれない、というレベルのプレーではありましたけど。

とは言えそもそも、記録を安打にするか失策にするかの判断というのはとても微妙なものです。

野手がゴロに追いつけずに外野に抜けて行けば大抵は安打が記録されます。
守備範囲が広い選手なら同じ打球に追いつけることもあるわけですが、なんとか捕球した後の無理な体勢から送球して悪送球になって打者走者が一塁に達した場合は失策が記録されてしまうことがあります。
公式記録員がプレーの状況を勘案して一塁への出塁は安打としたとしても、一塁手がボールに触れられないような悪送球で打者走者に二塁まで進まれれば、その進塁に対して失策が記録されます。
さらにこの場合、一塁手がうまく送球を捕ってくれてアウトになれば失策は記録されません。
守備の上手下手というのは単純に失策の数だけでは量れないというのが、野球の奥深さでもあります。

菊池については守備範囲があまりにも広いが故に、デビュー当時からこういった失策が散見される選手でした。
悪送球で二進されるリスクを考えれば無理に一塁に投げないというのも一つの選択肢ですが、菊池はアウトにできる可能性があると思えば果敢に送球します。
昨日の失策の場面、無気力なプレーや凡ミスではなく、ああいう菊池らしいぎりぎりのアグレッシブな守備の中で生まれた失策で記録が途切れたということは、むしろ誇らしいとも思います。
菊池なら普通にアウトにできる打球だった、と判断されてのことでもあります。

カープの本拠地であるマツダスタジアムは日本では珍しく内野にも天然芝が張られた球場ですが、内野手にとっては非常に守りが難しいグラウンドです。
その中でシーズン無失策という偉業を成したということは特に価値があると言えます。
リアルタイムで現役時代を見ることができているのが野球ファンとしてありがたいですし、自分の贔屓チームの選手であるということが本当に幸せなことです。

菊池がルーキーだった年の2月、私は初めてカープの沖縄キャンプを訪れました。
練習が終わって人気(ひとけ)がなくなった球場の周りを歩いていて、菊池が球場から出てくるのを見つけ、持参していたボールにサインをしてもらいました。
あの時間帯にまだ球場にいたということは恐らく居残りで練習をしていたんだと思います。
物腰が柔らかくてとても人当たりが良い人だな、という印象を持ったのを覚えています。
チームの中心選手としてカープをリーグ三連覇に導いてくれることになるとは、その時は想像していませんでしたが。

私の中では菊池涼介は永久に史上最高の、そして世界一の二塁手です。

 

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