群青色の時間

遥かなるマスター・オブ・ライフ<人生の達人>への道

カラスの知能

カラスは頭が良い鳥である、と言われます。

壷の中の水を飲むために、壷に石を入れることで水位を上昇させる、というのはイソップ寓話ですが、実際にカラスは知能が高いとされています。

クルミ等の木の実を上空から落として割って中身を食べる、という話も、カラスの知能の高さを示す話として流布しています。
更にその進化形として、道路の上に木の実を置いて自動車に踏ませて割った中身を食べる、というのも聞いたことがありました。
しかしながら、私は運転免許を取得してから約20年間、カラスがそういった行動をしているところを見たことがありませんでした。

道の真ん中にいるカラスが、車が接近するのを視認して飛び跳ねるように脇に避けるという行動はよく目にします。
車を怖がってバタバタと飛んで逃げるようなことはせず、人間が運転する車が無闇にぶつかってくることはない、ということを読み切った上で余裕のある動きでピョーンピョーンと跳ねて避ける姿に、若干のいまいましさを感じさせられます。

今年の秋に北海道に行った際、カラスが木の実を車に踏ませようとしているのを、私は初めて目撃しました。

レンタカーで走行中、前方にいたカラスが、くわえていた何かを路上に放置して脇に避ける姿を目にしました。
すぐに、木の実を車に踏ませるカラスの話を思い出しました。

しかも、カラスは木の実を車線の中央ではなく、ちょうど右のタイヤが走行する位置に置いていったのです。
意図的であるとすれば、なんという知能の高さでしょうか。

万物の霊長たるヒトとして、私はカラスの思惑にはまることを咄嗟に回避し、木の実らしき物を避けて走り去りました。
これほど鳥類に対して小者感全開の行為を見せるというのは情けなさの極みですが、そこはツッコミ無用。
辛うじてヒトの威厳を保ってやったわい、と思っていました。

その数時間後。

ほぼ同じ光景が、目の前で繰り返されました。

またも、右のタイヤが踏んでいくコースに何かを置いて避けるカラスに遭遇!

20年間、四国及び西日本を中心としたその他の道路で見たこともなかったカラスの行動を、北海道で1日のうちに2度も目にしたのです。

再び木の実らしき物を避けながら考えました。
果たして、これは偶然なのか?
四国のカラスにはない知恵を、北海道のカラスは持っているのではないのか?

もはや、カラスが置いた木の実を一度ならず二度までも踏まずに避けたとかいうことでは、ヒトの矜恃をキープできたとも思えません。

宮崎県の幸島ニホンザルがイモを洗うという行動を研究した今西錦司先生や伊谷純一郎先生は、人間以外の動物も文化を持っているという学説を提唱されました。

いやー、カラスも地域内で文化を共有している可能性があるんじゃないですかね。
四国では見たことのない行動をするカラスを、北海道では1日で2度見たわけですから。

カラス、侮り難し……。

にっぽんのカラス

にっぽんのカラス