飛騨俊吾「エンジェルボール」
プロ野球では昨日からクライマックスシリーズのファーストステージが開幕しました。
私の贔屓チームである広島東洋カープは、ファーストステージを突破したチームとファイナルステージで対戦し、2年ぶりの日本シリーズ進出を目指します。
今年こそは、悲願である日本一のチャンピオンフラッグを広島の地にもたらして欲しいところです。
というわけで、今日は小説「エンジェルボール」を紹介させていただきます。
飛騨俊吾さんが電子書籍という形で個人的に発表した作品が好評を博し、その後文庫版全4巻の長編として出版されました。
瀬戸内海に浮かぶ因島でトラック運転手をしていた主人公の寺谷和章は、ある日交通事故に遭った際、目の前に現れた天使から、魔球を投げる力を授かります。
寺谷はその力を使って、子供の頃から大好きな広島東洋カープを優勝させようと思い立ち、入団テストを受けに行きます。
42歳の超オールドルーキーとしてカープに入団した寺谷ですが、魔球が投げられるからといってなかなか最初からうまくはいかず……。
そして、寺谷の未来と魔球の秘密が明らかになっていきます。
寺谷のプロ野球界での奮闘と、家族や友人やチームメイトやライバルとの、時には心温まる、時にはすれ違う人間関係が描かれた作品です。
「天使が魔球を投げる力を授ける」というファンタジー要素と、勝負の世界の心理や、登場人物達の人間模様などがバランス良く丁寧に綴られています。
ライバルの早野薫との矛VS盾といった様相の対決は、ゾクゾクとワクワクが同居する描写で、子供のような心持ちで読み進めました。
そして、最終盤は涙なくしては読めません。
一部、「いやいや、シーズン中にそんなことしないだろ(笑)」というような場面もありますが、そこはご愛敬。
尚、この小説が文庫本として出版された翌年から、現実世界のカープもリーグ3連覇を達成するなど、カープファン的には非常にゲンの良い作品なのです(笑)。
とは言え、カープファンでなくとも、それどころか野球をあまり知らない人でも、楽しんで読める作品だと思います。