群青色の時間

遥かなるマスター・オブ・ライフ<人生の達人>への道

ターナー島と蛸の松

昨日、大阪中之島美術館で開催中のテート美術館展へ行ってきた。
今回は光をテーマにした特別展。
前半は印象派を始めとする絵画が並び、中盤から現代アートが中心となる構成だった。

近年、日本でも写真撮影OKの展覧会が増えてきて、このテート美術館展でも一部の作品は撮影が許可されている。
外国人客が増加している影響もあるのだろうか。
画像をネットで見られるから美術館へは行かなくても良い、ということにはならないと思うし、逆にSNSで拡散されれば興味を持つ人もいるので、撮影を解禁していくのは今の時代こそ良いことかもしれない。
客側のマナーはしっかりしないといけないとは思うけど。

さて、このテート美術館展ではウィリアム・ターナーの作品がプッシュされている。
ターナー夏目漱石の「坊っちゃん」にもその名が登場する画家である。
赤シャツと野だいこが舟から見える松の生えた小島を「ターナーの絵にありそう」ということで「ターナー島」と名付けるというくだりがある。
愛媛県松山市の四十島という島がターナー島のモデルとされている。
十島の松は1970年代にマツクイムシに蝕まれて枯死したが、現在では植樹により再び松の緑が美しい島となっている。

ターナーを鑑賞した後、大阪中之島美術館を出て堂島川を渡り対岸へ。
ここに蛸の松と呼ばれる松がある。
枝ぶりが蛸のようであることからそう名付けられたという。
古典落語の「次の御用日」にも名前が出てくるなど、かつては中之島のシンボル的な木だったらしい。
明治末期に枯れてしまったオリジナルは堂島川の向かい側、つまり現在の大阪中之島美術館付近にあった。
現在のものは今世紀に入ってから植えられた二代目である。

同じような来歴を持つターナー島と蛸の松。
テート美術館展の後は蛸の松も見に行かれてはいかがでしょうか。

美術や芸能もそうだが、こうして古いものを残したり復活させたりということ自体に感動がある。

按針塚/ウィリアム・アダムズ a.k.a. 三浦按針

先週の「どうする家康」にウィリアム・アダムズが登場した。

ウィリアム・アダムズ、またの名を三浦按針。
番組後の紀行コーナーでも取り上げられていた。
あれ?
登場を楽しみにしてたんやけど、これで出番終わり??

アダムズは西暦1600年に日本に漂着したイングランド人の航海士。
徳川家康に重用されて江戸幕府の外交顧問を務めた人物である。
旗本に取り立てられて三浦按針と名乗り、江戸時代最初期の日本が欧州各国と渡り合うために活躍したことで知られる。

簡単に外国と行き来できなかった時代の話。
アダムズも、まさかユーラシア大陸の向こうにある島国で侍になり、その地で生涯を終えるなどとは思いもしなかっただろう。
異世界転生を地で行った人物と言える。

以前、神奈川県横須賀市塚山公園内にある按針塚(安針塚と表記されることもあり)をお参りしたことがある。
最寄りの京急安針塚駅から塚山公園に至るまでの上り坂の角度がなかなかえげつなかった。
訪れる際はスニーカーで行くことをお勧めします。

(2018年6月撮影)

 

ザ・ビートルズ、最後の「新曲」

私にとっての神は5人いる。

1人は落語家の桂米朝
残りの4人はザ・ビートルズのメンバーである。

「それを言うならジョージ・マーティンも神やろ」というようなことを言い始めるとキリがないので、そのへんは置いておいてもらいたい。

日本時間2023年11月2日23時、ビートルズの27年ぶりの新曲「Now And Then」が配信で世界同時リリースされた。
ジョン・レノンが1970年代に録音したデモテープ音源を元に、他の3人のメンバーの演奏やボーカルを追加して製作された曲である。

ビートルズ解散後に同様の手法で作られた曲は、今回の「Now And Then」を含めて3曲ある。
これまで、1995年に「Free As A Bird」、1996年に「Real Love」が発表されている。
「Now And Then」も3曲目の新曲としてのリリースを目指して製作に着手されていたものの、当時の技術ではジョンのボーカル部分を綺麗に抽出することができず、完成を断念していた経緯がある。

それから20年以上が経ち、AI技術の進歩によって驚くほどクリアにジョンの歌声が音源から取り出された。
そこに、新たに録ったポール・マッカートニーリンゴ・スターの演奏とボーカル、オーケストラの演奏が加えられた。
ジョージ・ハリスンは2001年に他界したが、上述の1990年代のレコーディングの際の音が今回使用されている。
ポールがジョージを彷彿させるスライドギターを弾いているというのもニクい演出である。

さらに、既存曲の一部をサンプリングしたものなども加えられている模様。
詳しいことはマニアの人達が検証してくれると思うのでおいおい楽しみたい。

ジョンのオリジナルのデモテープにあったメロディの一部が使用されなかったことについて、否定的な意見も出ているようだ。
それは製作側の判断による選択であり、その意図がどういうものだったかということを公表する必要もないし、リスナーは与えられるものをリスペクトとともに受け取るのみだと思っている。
ビートルズくらいになると「プロのファン」みたいな人も多くて面倒なことだが、常に批判的な反応があることもいつも通りのビートルズと言える。

今回、ジョンのボーカルを切り抜くことに成功したのは、上述のとおりAIの力である。
AIの進歩によってもたらされるのは無論好都合なことばかりではない。
悪用をコントロールし切れるのかという点に絶望感すら覚える。
精巧なフェイクも作り出せてしまうAIは、音楽のような創作や表現の世界では危険をはらんでもいる。
しかし、正しく使えばこれまで考えられなかったことを実現できるのだと示してくれたのが、1960年代から新しい世界を切り開き続けてきたビートルズらしいと思う。

「Now And Then」がリリースされた翌日の11月3日、同曲のミュージックビデオの動画が世界同時配信された。
ビートルズドキュメンタリー映画The Beatles: Get Back」も手掛けた映画監督のピーター・ジャクソンによる映像作品である。

CGでジョンとジョージが現在のポールやリンゴと同一画面上で共演するという飛び道具には「やりやがったな(笑)」と思ったが、個人的に素直に受け入れられる。
受け入れられるどころか、いとも簡単に涙腺崩壊。
最後のシーンで、お辞儀をした4人の姿がステージから消え、バックの電飾の「BEATLES」という文字も消灯。
ビートルズマジックはこれでおしまい」と言われているかのような演出があまりにも切ない。

メンバーによって新しいものが作られる、という意味では、ビートルズの作品はこれが最後なのかもしれない。
しかし、ビートルズの伝説はこの世界に存在し続ける。
私に限っても、死ぬまで聴き続けると言い切れる。

1990年代に2曲の新曲が発表された「アンソロジー・プロジェクト」の頃、私は十代後半で、同年代はもちろん周りにビートルズガチ勢の大人の知り合いもほとんどいなかった。
新曲を聴いた他の人の感想は雑誌やファンクラブの会報で時間差で知ることしかできなかった。

しかし今回の新曲発表は全く状況が違った。

ネットとSNSが普及した今は、リアルタイムで世界中のファンの反応を見ることができるのだ。
ビートルズの新曲を世界中のファンが同時に楽しんでいる。
もうそれだけで感動的だった。
まるで「All You Need Is Love」が演奏された「アワ・ワールド(Our World)」の再現のようで、かけがえのない体験だった。
私のようなバンド解散の後に生まれたファンが、リアタイ勢になれた気がした。
本当に感謝しかない。

ありがとう、Fab Four。

 

 

相沢沙呼「medium 霊媒探偵城塚翡翠」

【ネタバレあり】


相沢沙呼氏によるミステリ小説。
2022年には清原果耶さんの主演で実写ドラマ化もされた作品である。

霊媒の力を持つ城塚翡翠と、彼女のその能力を駆使する作家・香月史郎が、殺人事件の謎に挑む物語。
「超能力的な力が使えるなら何でもありで、推理ものとして成立しないのでは」と思うが、翡翠の霊能力は万能なものではなく得られる情報は限られたものであり、それを香月が論理的な筋立てに変換して事件を解決に導くという流れで、ミステリの変化球として非常にうまく作られている。
……と思って読み進めましたよ、素直な読者ですから。

終盤の超展開に唸る。
作中でも触れられているが、事件の謎の解明に至るまでの筋書きが事実上2つ用意されている。
最初は「これ、香月の一人称にした方がわかりやすいのでは」と思って読んでいたが、一人称では駄目だということがあとでわかる。
作品のタイトルが「霊媒探偵城塚翡翠」になっていることについて、「探偵役は香月やけどな」とツッコミながら読み進めて、最後にはやっぱりタイトルどおりだったらしいと知ることになる。
色んな意味でまんまと騙されましたよ、愚鈍な読者ですから。

あざとい演技でもほとんどの男性は信じ込む、という翡翠の台詞がある。
これに関しては、「男性作家が描くヒロインによくあるキャラ設定だな」と思いつつ読んでいたが、作中でその点を指摘するための布石だったとは。
そして香月の筆名にも、物語の真相に繋がるヒントが隠されている。
目に見える形で提示されていたのに。
完全に作者の掌の上で転がされてましたよ、チョロい読者ですから。

エピローグまで読んで、結局城塚翡翠とは何者で、本来の人となりがどうなのか、またも混乱する。
なんとも言えない読後感。
巻末の解説で、作者の相沢氏はマジシャンでもあるということを知る。
全ての謎の答えが描かれないままに、種が明かされないままに閉じられる物語。
まるで、読むマジックだった。
とんでもない次元の面白さを体験させていただいた。

 

 

 

新井貴浩

プロ野球クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージが今日から始まった。
初戦はセはヤクルト、パはオリックスと、両リーグともレギュラーシーズン優勝チームが勝利。
私はCS否定派だが、プロ野球の試合が観られることはシンプルに嬉しい。
今年も贔屓のチームがポストシーズンに進出していないので、野球を純粋に楽しんでいる。

さて、その贔屓のカープは今シーズンもCSの蚊帳の外。
そんな中、新監督に就任することが決まった新井貴浩さんの記者会見が、本日広島で行われた。

YouTubeアーカイブで会見の様子を視聴した。
「ファンの皆さんの気持ちを真っ赤に燃えさせるように頑張っていく」という言葉が印象的だった。
新井さんはカープを三連覇に導いたレジェンド中のレジェンド。
どんなスター選手でも、監督になって勝てないとファンやメディアにバッシングされる。
正直、大好きな新井さんが叩かれるところは見たくないので、今回の監督就任には個人的に複雑な思いを抱いていた。
しかし、今日の会見を聴いて新井さんの覚悟を感じ、とにかく精一杯応援するのみだと思い至った。
そもそも、新井さんは現役時代、特に若手の頃、成績が上がらず連日叩かれる日々を過ごされた方である。
どんな逆境でも立ち上がる姿こそ、ヒーロー新井貴浩の真骨頂。

新井さん、4年連続Bクラスに沈んでいるカープをよろしくお願いします。
もう来シーズンが待ち切れません。
2月のキャンプインを楽しみに、野球がない長い冬を乗り切れます。

 

 

渋沢栄一(東京都千代田区)

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大河ドラマ「青天を衝け」が本日最終回を迎えました。
「日本資本主義の父」と言われる実業家、渋沢栄一吉沢亮)の生涯を描いた作品でした。
渋沢は維新後に経済人として活躍した人物というイメージがありますが、このドラマでは幕末・維新期にかなり時間が割かれていました。
徳川慶喜(草彅剛)や平岡円四郎(堤真一)のキャラクターが良くて印象に残っています。
慶喜が平岡に出会った頃の回想シーンで、慶喜が配膳の仕方を説明している場面が落語っぽくて面白かったんですがあまり共感を得られません(笑)。

2024年に刷新される一万円札の肖像にも選ばれている渋沢栄一
この渋沢の銅像は東京駅のすぐそばにあります。
東京にお出かけの際にお時間があればちょっと足を運んでみていただきたいです。

(2021年12月撮影)

aiko

aikoが結婚していたことを発表したとの報。

私が大学3回生の時にうちの大学の学祭でライブをやったのが「あした」でデビューしたばかりのaikoだった。
学祭の実行委員をしていた友達から「チケット売れんで困っとうねん。1000円でええから買うてくれへん?」と言われて、確か1500円だったチケットを1000円で買って観に行った。
全国的には無名で私も名前も知らなかったけど、関西ではラジオもやってたので学外からコアなファンも結構来ていたのが印象に残っている。
MCも面白かったし、歌がめちゃくちゃ上手かった(その後喉を壊してからちょっと苦しそうな感じになってるけど)。
あっさりハマってライブ翌日に三宮に行ってCDを全部買ったちょろいヤツです(インディーズ盤含めて4枚だったはず)。
それから1年くらい経ってミュージックステーション出演をきっかけにあれよあれよという間にスターダムを駆け上がっていく様は絵に描いたようなサクセスストーリーに見えたなぁ。

うちの学祭で「アイコて誰やねん」と言われていた頃から23年。
今も一線で活躍しているのは素晴らしいことです。
ご結婚本当におめでとうございます。